次の日、終業後の時給有りのミーティング時間に、E先輩から人事関係の「良いほうの話」を聞かされました。「ちょっと早いかなとも思うんだけど、Uくんは来月からプライマリーに一段昇級することになりました。時給アップはもちろん、服飾手当が2倍に、加えてグルーミング手当が付きます」と、ここで先輩はいつものカジュアルな口調に戻り、「これはまあ、端的には脱毛とかそういうことに自由に遣えるようにって手当なんだけど、内輪では『チャーム・アップ手当』とか『ポテンツ手当』とか呼ばれてるもの。男の人だと、まあたとえば亜鉛みたいな精力増進サプリとか良いコンドームを色々試したりとか、お客様により好ましい異性となるべく切磋琢磨するのに遣ってね、ってことね。で、コンドーム絡みってわけでもないんだけど、ちょっとついてきて ー」そう言うと先輩は控え室を出て、1Fのプール周りのほうへと僕を連れて行くのでした。



プール用の更衣室やトイレへと続く廊下の「ユーティリティ」室のドアをノックし、鍵が開いてるのを確かめ入室するとE先輩は言いました。「たとえばここは、明示的で代表的なセックス・スペースなんだけどw」僕はそれまで、自分とは無関係な用具室か何かなのだろうくらいにしか思っていなかったので、軽く驚いた表情を見せたと思います。「ここ、そしてこことか ー」と先輩は机や棚の板面の下を手で探っては未使用のコンドームを取り出してみせました。「Uくんも自分の手でそれらしきとこを探ってみて?直立した時の垂らした手先の高さが目安になるから」そのとおりに手探りしてみると、なるほど家具なり造り付けの棚なりのあちこちに、コの字型の小さな金具の受け棚が設えてあり、それぞれに3、4パックそこらのコンドームが隠してあるのでした。



「でね?こういう、何ていうか、ルームやスペースは館内には小から大までそこかしこにあって、プライマリーからは急速にお客様からのお誘いも自然と増えることになるのね。トレイニーのこれまでとはちがって、なんだかんだでひとりで行動する時間が増えるわけだから。で、そこですっごく大事なのは、有頂天になってお誘いのままにセックス、セックス、セックス!とかやっちゃうと早晩破滅が待ってる、ってこと。相手がお客様でも、上・下・同級のイントラでも、セックスの際にはコンドームを使うのは当然中の当然のこととして、それ以上に心懸けておくべきなのは、きみは便利な人間ディルドーではないってことね。ぶっちゃけ、うちのお客様の中にも『若いオスならとりあえずつまみ食いしとこう』みたいな方はいて、で、プライマリーやセカンダリーでダメになっちゃう男子は、本末転倒にもそういう特定のお客様に捕まって溺れちゃうパターンなのね。現時点のUくんだと... そうだな、たとえばF様がちょっとした気まぐれから、1回試しに食べてみよっかなって程度のお戯れを思い付かれたら、一も二もなく飛びついちゃう、でしょう?」僕は当然うんうんと頷くしかありません。「ま、F様みたいな方はけっしてそういう趣味の悪いことはなさらないんだけど、う〜んと、そうだな、20代前半の女子大生やOLのお客様には、そういうことが大好き、そういう刺激をしょっちゅう求めてる、って方もいなくはないからさ」



「だからって勘違いしないでほしいんだけど、エキスパートになるまでセックスは我慢しとけ、ってわけじゃないのよ?良いセックスなら、むしろガンガン経験を重ねて、たとえばMさんみたいな、お客様に求められるヴェテランになっていくために必要、必須なものですらある。でも、駆け出しの男子イントラだと往々にして、期待はずれのペニスと期待はずれのセックスが失笑混じりのおしゃべりのタネにされて、なっかなか汚名返上の機会に恵まれずに従業年数だけ重ねていくってことにもなりかねない。そうなるとシニア昇級もずいぶん難しくなるからね。ひとりの、目の前のお客様を相手にする時も、常にそのお客様から拡がるおしゃべり口コミのことまで意識しとく必要があるの。そういう意味では、独り立ちの始まりであるプライマリー期は、これまで以上に人当たりの上手い下手が問われる期間と言える...」学者か経営者のような口調に我知らずなっていくE先輩の談話を聴く内に、僕はなんだか、この昇級が嬉しいものどころか、大変で恐ろしくて、何より早すぎるものではないかと心配する気持ちのほうが大きくなってきました。おそらくそれが表情に出てしまっていたのでしょう ー 先輩は急に微笑みベースの顔つきになって、「や、まあw 脅かすみたいな話ばっかりになっちゃったけど、そんなしょっちゅう毎日毎時間、そういう『決断の瞬間』が訪れっぱなしになるわけじゃないからね。そもそも最初の内は、いろんなレッスンに向けてのレッスン ー ひとりでレッスンができるようになるための模擬レッスン講座を他のいろんな上級イントラから受けるのがスケジュールの大半になるから。そこで... 何ていうか、他のプライマリーやセカンダリーやシニアはどんな感じの人当たりで就業時間内を過ごしてるか、どういう人当たりスタイルが自分のそれの参考になるか、そういうことが自然と分かってリラックスできるようにもなってくるからね。まあ、最初の2週間くらいはあっぷあっぷでどこでも緊張しっぱなし、みたいになるかもしれないけど、いきなり羽伸ばして図々しくなるよりはずっとマシだから。難しくはあるだろうけど、ま、思い詰めすぎないように、気楽に、ね?」と安心させるべく気遣ってくれるのでした。



それで少しは安心できた僕でしたが、同時に、まるでE先輩が僕の言わば「お世話係」の役を離れたがっているような、「後は自力で頑張っていきなさいね」とでも言われているかのような気がして、そちらのほうにむしろ大きく引っかかってしまいました。それで僕は、切羽詰まり焦った結果ちょっと情けなく恥ずかしい訴えに出てしまったのですが、思いがけない怪我の功名で小さなご褒美をもらうことになったのでした。
(随時続く)






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