これは、わたしがとあるアイドル・グループに所属していた時のお話、生涯でいちばん、そしておそらくは唯一愛していた子とのお話です。わたしはその子に、許しがたい狼藉を働いたとは思ってはいますが、同時に、ああいう状況であれば、何度生まれ変わっても同じ行動に走ったろうと思います。わたしの人生で最大の、そして実らかなった恋心。決定的に嫌われて距離を置かれてしまうことになった彼女への恋心。いま思い返せば、彼女Kへのわたしの想いがキモくて重いものだったのは重々承知のことではあるのですが、じゃあ時を巻き戻してもっと「上手く」「まともに」進められたはず、と言えるかと問うならば、答えはノーとなるのです。



メンバー選考の審査結果が発表される前から、KはわたしにとってのNo.1アイドルでした。なんて綺麗で整った顔。なんて不思議で愛おしいキャラクター。なんて凛々しく揺るぎない内面。3次審査から一緒だったわたしはファンの人たちより先に既にKのファンになっていました。一緒に合格して、いざ同じグループで活動していけるぞとなった時には、薔薇色の日々を思い描いていました。実際には芸能活動上では、予想もしてなかった不遇と苦渋の日々が3年ほども続くことになったのですが、わたしにはいつもKが傍らにいるってことだけで何だって堪えられるって感じでした。人気・序列的には、まず圧倒的にKが何馬身分も先行し、やがてじわじわとわたしが追いつき追い越し、かと思えば気分の上下動の激しいわたしがとある落ち込みからしばらく足踏みし、その間にKがあっちでこっちでハネて「発見」され人気メンバーとなり… と、仲良いながらもライヴァル、ライヴァルながらも仲良しという関係が続いていたのでした。でも、それはあくまで「運営」側から、あるいはファンの人たちや世間の側から見ての話。わたしとしてはいつだって、絶対に敵いっこない女神にも等しいK、必死に置いていかれまいと歯を食いしばって頑張る自分、そして要所要所の大事な機会には必ず気付きと救いの手をさらっと差し伸べてくれるK、という関係性を意識していました。



わたしたちが加入してからの6年め、外から見てならわたしが上から15番手Kが30番手といった序列にあるころ、わたしはいくつかの発言からものすごいバッシングに遭っていました。「アンチ」の人々に言わせれば、わたしRは勇ましい大言壮語をするクセに「太もも釣り」みたいなことばかりやってるズルくて頭の悪いブス、ということなのでした。一方でKは、下から数えたほうが早い序列にありながらも、その発言のクレヴァーさや一貫してブレない媚びのなさで小さいながらも確固とした支持基盤を得ていて、未完の大器・無冠の女王の称号をものにしていました。わたしとKは、グループ内のお仕事では同席して顔を合わせることもめっきり減り、またそれぞれに別のメンバー間交遊関係ができていたこともあって、特段ケンカしてるわけでもないし袂を別ったわけでもないながら、親身に深い話をする機会もなくなり ー ぶっちゃけ、内心でわたしはKから「別物」として見限られてしまったというふうに感じていました。



そんな時期の秋、わたしは握手会でかつてなかったほどの大量アンチ攻撃を食らってメンタルを病み、しばらくお仕事を休むことになりました。実家で家族に心配げな言葉をかけられたりするのはむしろいっそう堪えがたく感じられたので、一人暮らしのマンションの一室で、好きなアニメや宝塚のDVDを思う存分観漁って少しでも気分が前向きになるのを待つように日々を過ごしていたある日、思いがけなくKが訪ねてきてくれたのです。



インターフォンのカメラでKの顔を観た時、正直わたしは、ああ、どうしよう?と思いました。朝起きたまんまシャワーも浴びず髪もとかさずのブスな姿を見られたくなくて。それで、大急ぎで身支度するから20分ほどカフェか何かで暇をつぶしてもう1度来てくれるよう謝って頼みました。Kが快くOKしてくれたので、わたしは大急ぎでシャワーを浴び、メイクをし、ざっと部屋を片付け… する内、Kが再びインターフォンを鳴らしたので上がってきてもらうようエントランスのドアを解錠しました。



リヴィングに通すとKは「あれ、けっこうクール系なんだね〜?」とインテリアを見渡して言いました。そういえばKがわたしの一人暮らしの部屋を訪れるのはそれが初めてだったのです。残暑がぶり返して軽い夏日だったこともあって、Kの私服は加入時そうであったようにTシャツにデニムのショーパンという素朴なものでした。アイス・ティーを出してL字のソファのKの右手コーナーに座ったわたしは、こんな状況だというのに、Kの美しく引き締まった足首を、ふくらはぎを、そして2人っきりの場では思い出せないくらいにひさびさに間近に見る太ももを、ちらちらと盗み見ずにはいられませんでした。
(「2」に続く)






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