そのあと、わたしは敢えて大きめに、でもわざとらしくならない程度に寝息を立てるふりをして、Aの出方を待ちました。2、30分もする内には、ふりのはずの寝息自体が催眠的効果を発揮して、わたしは実際、軽く眠りにつき始めていたと思います。「N、好き。好きよ」 — それはAが実際に耳許でささやいたことだったのか、それともわたしの夢うつつでの想像だったのか、定かではありません。



Aは先程までより抑えた息づかいでわたしの髪の匂いをしばらく嗅いでいる様子でしたが、わたしが目覚める反応を示さないと見るや、そっとわたしの右の二の腕をなで始めました。初めは半袖のTシャツの生地の上から、そしてすそから手を入れて直に。同時にAの鼻と唇は、わたしの肩を探るように這っていて、仔犬か何かのようなその仕草に、じきにわたしは「あ、ブラのストラップを探ってるのか」と思い当たりました(ちなみにわたしは寝る時にはブラは着けない派でした)。



わたしがノーブラなのを把握したらしきAは、わたしの右ひじの下から胸へと手を伸ばし、Tシャツの上からわたしの乳首を探り当てました。そ〜っと指の腹で触れるか触れないかくらいの微細な刺激に、じきに乳首が硬くなってくるのを感じました。「Nの乳首、ちっちゃいね?かわいい...」耳許でささやくAの声は、わたしに話しかけているつもりなのか、寝ているわたしに言うでもなく独りごちているのか分かりません。ただ、Aは意外とおマセなとこがあってそういうヘンな漫画をたくさん読んでいたので、猥語を口にするのがうれしいというだけのことだったのだと思います。



その当時のわたしは、とりあえずヴァージンではなかったものの、あまりいい想いでとはいえない交際でのほんの数回のセックスしか経験していなかったので、年下の、しかも同性である女の子からの愛撫とはいえ、乳首を刺激されて硬くしているということに思いがけないほどドキドキしました。もういっそのこと、寝てるふりをやめて、正面きってAの愛撫を受け入れたい、Aのするがままにまかせて乳首をぺろぺろとかされたらどんな感じだろう — そんなふうにさえ思えました。それでもわたしの、ズルくて臆病な心は、とうていそんなことを許してはくれなかったのですが。



乳首をさわさわくりくりするのにいい加減満足したらしきAの指先は、そのままツ〜っとわたしのおへその方へ、そしてパジャマ替りのハーフ・パンツのゴムをくぐって、下着のパンツの方へと向かいました。いきなり指を入れられたりしたらどうしよう、みたいに一瞬抱いたわたしの不安に反して、Aは本当にそ〜っとパンツの上からわたしのクリットを、それこそ触れるか触れないかくらいの柔らかさで撫でさすり始めました。それはわたしが経験した男性の指よりも、わたし自身の指よりもずっと繊細で、しかもずきんずきんと内から湧きあがってくる快感の波を巧みに引き出すような上手な愛撫でした。わたしは下唇を噛むようにして声を洩らしてしまうのをこらえていたつもりでしたが、Aにはバレちゃってたかもしれません。



本当に寝てる時にクリットでイかされることがあるとしたら、その寝てる人の反応としてはどういうのが自然だろう — そんな正解が分かる人はそんなにいないでしょう。わたしは声こそ洩らさなかったものの、自分の肩や太ももあたりがビクッ、ビクッと痙攣的に動いてしまうのを抑えられたとは思えません。でもAは、「イった?よかった?」みたいな無粋な問いかけをしたりなどはせず、「寝てるまま」のわたしに「N、愛してる、一生愛してるよ」とささやきかけ、じきに自分のふとんに戻っていきました。



明くる朝、わたしはAにどう接していいか、最初に顔を合わせた時どう反応したらいいかと迷っていましたが、Aはいつもと変わらぬ屈託のない態度だったので、わたしも普段どおり接することができました。お昼前にみんなで解散して、次の日も、次の週も... Aとわたしはその夜のことはおくびにも出すことなく、以前どおりの付き合いが続きました。わたしにとってもやっぱり恥ずかしいことはAにも同様だった、ということなのでしょう。あの夜のことは、何かAなりの心の中の事情から、どうしてもそういう行為に出ずにはいられないという突発事項だったのだと思います。



それから2年ほどしてグループ「N」からは1人脱け2人脱け... わたしも4人めの「卒業」となり、その後やがて「N」自体も解散して失くなりました。わたしは卒業後、どちらかというと文筆系のお仕事のほうにシフト・チェンジしていき、一度などは女優としてリスタートを切ったAにインタヴューする仕事をやったことさえありました。それから数年が経ち — 今では元芸能人として気づかれることもなく文筆業生活を楽しんでるわたしは、若手ながら地味シブに光る新鋭女優となったAをテレビで観ています。



あの時のAはどんな気持ちからああいう行動に出たんだろう?「一生愛してる」ってどんなつもりで言ってくれたんだろう?いくら考えても分からない解を、テレビに映るAの姿からいつか読み解くことができるかのように、出くわした出演番組を食い入るように観てしまう自分がいるのです。






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